利益が出た!…からといって安易に役員報酬を上げてはいけない3つの理由




会社の業績が伸びてくると、「今年は利益がたくさん出た」「でも、こんなに税金を払わなきゃいけないのか…」という嬉しい悲鳴(?)をあげることが増えてきます。

そんな時に多くの社長が考えるのが、自分の役員報酬の増額。

例えば会社の利益が800万円なら、自分の年間給料を800万円増やす。そうすれば会社の利益はゼロになり、法人税を払う必要はありません。

…ここまで極端な例は少ないかもしれませんが、多くの会社が、利益が増えれば役員報酬も増額しています。

 

デメリットを理解した上でバランスを考えた計画的な増額なら問題ありませんが、なんとなーくで行う安易な役員報酬の増額はオススメできません。

今回は、役員報酬を増やして利益を減らしてしまうデメリットをお伝えしていきます。

理由①:資金調達力が落ちる

会社の利益が減るということは、金融機関からの評価が落ちてしまい、お金が借りにくくなるということでもあります。

 

例えば銀行は、会社の返済能力の有無を判断するときに、

利益+減価償却費=

という算式を用います。

利益に減価償却費を足したこの値は、最低限プラスでなければいけませんし、できれば借入金の年間返済額より上回っておきたいところです。

そうでなければ、返済能力が乏しい会社だと思われてしまいます。

 

そして、借りすぎ(銀行から見れば、貸しすぎ)でないかどうかの判断にも、利益が関わってきます。

銀行から見れば、利益がしっかりと出ている会社にはたくさん貸せますが、利益が出ていない会社にはあまり貸したくないでしょう。

 

このように、利益を減らせば減らすほど、会社の資金調達力は落ちてしまいます。



融資の判断には他にもさまざまな要素がありますし、中小企業の場合は社長と会社を一体として考える向きもあるでしょう。しかし、利益が出ていなければ話にならないのも事実です。

 

「そもそもお金なんて借りないし」「利益が出ているんだから借りる必要がない」と思われるかもしれませんが、今後何十年もずっと利益が出続ける、問題なくお金が回る、と断言できる中小企業はなかなかないでしょう。

そして、赤字になり資金繰りが苦しくなった時には、銀行はお金を貸してくれないわけです。

 

理由②:トータルでの税負担は増える

役員報酬を上げて利益を減らす、時にはゼロにすれば、法人税もゼロになります。

「わーい」と喜べるものではありません。トータルでの税負担は増えているケースも多いからです。

 

例えば、会社の利益が400万円あって、「法人税を払うくらいなら、自分の給料を上げよう」と考えたとします。

年収600万円の方が年収1,000万円になった場合、社長個人にかかってくる税金は、次のように増えます。

  • 所得税が約62万
  • 住民税が約32万
  • 社会保険(個人負担と会社負担の合計)が約60万

収600万円の場合に比べて、合計約154万円負担が増えます。ただし、利益がゼロになりますから、法人税はゼロです。

 

ちなみに、給料を上げずに、利益400万円のままにした場合の法人税額は、約97万円です。

給料を上げずにそのまま法人税を払ったほうが、154 – 97 = 57万円、トータルでの手残りは多いことになります。

 

なんとなく「法人税を払うのは嫌だから…」と考えて給料を上げても、結局個人に負担が来るわけです。税金を会社で負担をするか、個人で負担をするかの違いでしかありません。


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ただ、法人税は年1回なので負担が重く感じられますが、個人の所得税や社会保険は毎月天引きなので負担がわかりにくい。だからどうしても法人税の節税にばかり目が行ってしまいがちです。

負担感ではなく、負担金額で考えるようにしましょう。

 

給料を上げること自体が悪いというわけではありません。事業を頑張って利益が出たわけですから、見返りがあって当然ですし、報酬が増えればモチベーションもアップします。

ただ、「税金を払いたくない」という理由で給料を上げるのはナンセンス、というだけです。

会社と個人、トータルでの利益が増している以上、個人or法人、どちらかで課税されてしまうわけですから。

 

理由③:良いときは続かない

この記事で一番伝えたいのは、「良いときが続くとは限らない」ということです。

 

今後何十年も事業を続けていけば、必ず不調はやってきます。

それが自社の努力不足によるものならまだ救いがあるのですが、リーマンショックや震災のようなことが起きた場合、どうしようもありません。

 

そういった厳しい時期にも耐え抜ける、強い会社にするためにはどうすればいいか。

それは、「業績の良いときにどれだけ会社にお金を溜め込めるか」にかかっています。

 

ここ数年はアベノミクスの影響もあってか、金融機関は「借りてくれ」という姿勢ですし、景気も悪くなく、比較的事業はしやすい時代という印象があります。

しかし、現政権主導の政策というだけですから、今後も続くかはよくわかりません。

そして、政治が方向転換をしたとき、その影響を真っ先に受けるのは中小企業だと思うのです。

 

僕がこの業界に入りたてだった2011年頃は、超不景気に追い打ちをかけるように震災が起き、金融機関の態度もどんどん厳しくなっていました。

リーマン~震災あたりは、色んなデータを見ても、倒産件数が多い時期です。勤め先のお客様も、倒産や休業をする会社が増えていました。

そういったことが今後起こらないとは誰も言い切れないでしょう。

 

不景気や業績不振を乗り越えるためには、業績の良いときに会社の体力をつけておく=お金を溜め込んでおくことが必須です。

業績が良い時にこそ「必ず浮き沈みがある」という意識を持っておき、内部留保を厚くすることが大切です。

キャッシュ、内部留保こそが会社の体力であり、その2つを厚くすることこそが、厳しい時代でも倒れない体力=会社を強くすることだからです。

 

ちなみに「調子が悪くなってから給料を減らす」では遅いです。生活水準はなかなか下げられませんし、再起のための時間やお金を捻出できず、ジリ貧…というケースを何度も見てきました。

だからこそ、安易に役員報酬(生活水準)を上げすぎない、謙虚な経営姿勢が大切です。

 

(偉そうにすみません…と思いつつも、とても大切なことなので、クライアントにはしつこいくらいにお話しています)

誤解しないでいただきたいのは、役員報酬の増額を全否定しているわけではありません。

役員報酬の増額・融資・税負担・将来。この4つのバランスを考えて、役員報酬を決めていただけたら。

会社に残す or 個人に残す、のバランス。貯金 or 消費のバランス、と考えてもいいかもしれませんね。


[編集後記]

昨日は、ブログが終わった後は、相続関係で外出(土地の現地調査とか)。

娘のクリスマスプレゼントが届いたので、見つからないようにしまっておきました。

この記事を書いた人 入野 拓実
独立3年目の30歳。自称「とっつきやすい系税理士」
『得意分野⇒フリーランスの法人化/中小企業の経営分析/自力申告サポート/独立起業支援』
ブログは平日毎日更新。遠方・スポットにも対応。セミナー自主開催。
1989.3.6生まれ。妻・娘(3歳)と3人暮らし。
エンジョイゲーマー・音楽オタク。基本カジュアル。
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ABOUTこの記事をかいた人

音楽オタクで一児のパパな30歳の税理士。 遠方の方やスポットのご相談にも対応しています。 得意分野 → 法人成り・財務分析・残るお金を最大化するためのアドバイス。 ブログは平日毎日更新、フリーランスや社長向けの財務・経理や、自分のワークスタイルについて書いています。