飲食店・美容室など現金商売の税務調査の流れ&対策上の注意点。売上は徹底的にチェックしよう




飲食店・美容室・小売店など、いわゆる現金商売。

現金商売の税務調査は、他の業種と比べると特徴的な点や抑えるべきポイントがいくつかあります。

実際に行われる税務調査の流れと、税務調査で追徴課税にならないために普段から気を付けておくべきことをまとめてみました。

 

現金商売の税務調査の流れと対応

いきなり黒スーツを着た税務著の方が何人も来たら、誰でもビビってしまうと思いますが、必要以上に構えることはありません。

 

事前連絡無しでいきなり調査官が来ることもある

税務調査が行われる場合は、原則として調査の事前に通知しなければならないと法律で定められています。

したがって、通常は事前連絡→日程の調整→実際の調査、という流れで行われます。

 

事前通知なしで税務調査が来たらどうするか

まずは、

 

  1. 調査官の身分証明書を確認する(氏名・所属などを控えておく)
  2. 顧問税理士に連絡し、来てもらう

 

と良いでしょう。

 

経営者と税理士が到着するまでは、従業員さんはいつもどおり仕事をしていて大丈夫です。

 

何を見られるか

事前調査無しの場合、通常の税務調査のように、何日かかけて聞き取り・帳簿や書類の確認をいきなり行うことは経験上ありません。

 

  • どういう流れでお客様にサービスを提供しているか
  • 販売の形態はどうなっているか
  • 現金の管理はしっかり行われているか
  • 書類の保存はしているか
  • レジ金と売上の照合の記録は残しているか

 

など、業務の流れと売上の管理について細かく聞かれるでしょう。(伝票や書類だけ受け取って帰る場合もあります)

税務署側は、現金商売特有の不正を行っていないかどうかの確認を行うために、抜き打ちでこういったことを確認しに来ているわけです。

日々きっちりとした管理を行っていれば怖がる必要はありません。

 

以下、具体的な方法を書いていきます。

 

申告した売上金額と実際の売上金額が一致しているか?

税務調査ではどの業種でも売上を重点的に調べますが、現金商売の場合は特にその傾向が強いです。


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ボクの経験上、9割は売上について時間を使います。

逆に言うと、現金商売の税務調査においては、売上の漏れさえなければ、大ダメージを食らうことはあまりありません。

 

正しい申告をし、その申告の金額が適正だと証明するためには、日々の現金の管理が重要になります。

具体的には、

 

  1. 売上の領収書や伝票には通し番号を入れる
  2. お客様からお金を受け取ったら、必ずレジを打つ
  3. レジの中の釣銭の金額は毎日一定にする
  4. 毎日レジを締めた後に金額が正しいか確認する
  5. レジの中のお金から支払いをしない

 

といったことを徹底しましょう。

基本的なことですが、最も効果的です。

これらを行えば、売上の計上漏れを防ぐのと同時に、従業員が売上をポケットに入れてしまう不正を防ぐこともできます。

 

その1:売上の伝票には通し番号(ナンバリング)を入れる

飲食店ならテーブル伝票、小売店や美容室なら領収証。こういった売上の記録となる書類には、必ずナンバリングを入れましょう。

 

ポイントとしては、

 

  1. 伝票を使う前にあらかじめ全てのページにナンバリングを入れる
  2. 書き損じを捨てない
  3. 番号順に保管する

 

の3点です。

 

①…後から番号を入れるのであれば、No.10を破棄→再度No.10と記入、といったことができてしまうので、ナンバリングの意味がありません。

②…書き損じを捨ててしまうのもNGです。ナンバリングは番号順に続いているから意味があります。捨ててしまっては書き損じと売上を抜いたことの区別がつきません。

③…No.1-100までの通し伝票の綴りなら、それを最後まで使い切ってほしいという意味です。

例えば「No.90までしか使ってないけど月が変わったし余りは処分しよう」といって捨ててしまうと、No.91-100は売上が抜かれていないという証明ができなくなります。

 

最初からナンバリングが記入されている伝票もありますから、それを購入するのがベターです。

大切なのは、「特定の番号の伝票を捨てる→その番号の売上はポケットに入れて申告しない」というような不正ができない仕組みを作ることです。

 

その2:お客様からお金を受け取ったら、必ずレジを打つ

「当たり前じゃん」と思われるかもしれませんが、ここがテキトーなお店も多いのです。。。

レジが開けっ放し、レジじゃなくポケットにお金を入れる、そもそもレジを導入していない…などということがないようにしましょう。

 

その3:レジの中の釣銭の金額は毎日一定にする

お店を開店した時点でのレジの中身は、毎日一定の釣銭しか入っていないようにしましょう。

業種やお店の形態によって必要なお釣りの金額は違うでしょうから、一定であればいくらでも構いません。

閉店後レジ締めを行い、その4の作業を行ったら、釣銭だけを残して売上金は金庫などに入れておくといいでしょう。

 

その4:毎日レジを締めた後に金額が正しいか確認する

毎日閉店後にはレジ締めを行い、金額のチェックを行いましょう。

ここが特に重要な点で、その1~その3は、これを行うための準備と言っても良いでしょう。

 

  1. レジペーパーに記載されている売上金額
  2. レジに入っている実際の金額 ー お釣りの金額
  3. その日のテーブル伝票や領収書の合計額

 

この3つの金額が一致していればOKです。

 

特に②のレジに入っている金額の確認が重要です。(金種ごとにやるとベストでしょうね)

この金額が①、③と一致するのは、

 

  • お客様から預かった金額、返したお釣りの間違いがない
  • 従業員が不正をしていない

 

この2つの条件が揃う場合です。

もし一致しない場合は、原因を突き止める必要があります。

お釣り間違いの場合はその分を現金過不足として処理しましょう。

 

その5:レジの中のお金から支払いをしない

レジの金額=その日の売上の金額+釣銭の額の合計額であるべきことは、その4でも書きました。

レジの中のお金から、経費などのお金を払ってしまうと、その前提が崩れてしまいます。

管理がめちゃくちゃ大変になりますし、ミスも起きやすいです。

できる限り正確で楽な仕組み作りをするためには、レジの中のお金から支払いをすることは避けたいところです。

 

対策としては、

  • 経費は事業主個人のポケットマネー・クレカ・お店の預金から払う
  • 代引きなどは立て替えておいてもらい、給料と一緒に振り込む
  • 小口現金(レジの売上金とは別のサイフを作る)を活用する

 

などが挙げられます。

 

POSレジの場合

AirレジなどのPOSレジシステムは便利です。

自動的に連番が付されますし、注文とレジが連動しますから、お会計や経理の時短にもなりますし、スマートです。導入しているお店はどんどん増えてきています。

POSレジの場合、タブレットなどの端末で入力された商品の種類と数=売上となりますから、当然にPOSレジの売上データ=レジ金となります。


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しかし、だからといって、レジ締め後の現金チェックを行わないわけにはいきません。(釣銭間違いはPOSシステムでも防げませんし、お金が抜かれるのも防げません)

必ず毎日現金チェックを行い、POSレジデータと現金の照合を行った証拠を残しておきましょう。

手書きで十分ですが、Airレジの場合はレジ金チェック機能で金種ごとにチェックを行うことができます。それを利用するのも良いでしょう。

 

売上を抜いて証拠を捨てる???絶対にバレるからやめましょう!

閉店数時間前にレジを締めてそれ以後は打たない、一部の売上はポケットに入れて証拠書類も捨ててしまう…

この手の不正、はっきり言ってすぐバレます。

そもそもバレるバレる以前の問題で、節税や租税回避とは違い、「脱税」は立派な犯罪だという意識を持ちましょう。

逆に言うと、小規模な中小企業や個人経営の現金商売の税務調査って、不正さえしてなければたいして怖くないですよ!

 

調査官は実際にお店に足を運び、サービスの提供を受けているかも

調査官の方は、調査に来る前に、お店の周辺を見て回ったり、実際にお客さんとして来店してサービスの提供を受けている場合もあります。

その際に、

 

  • 開店時間・閉店時間
  • レジは導入されているか・きちんと打っているか・二度締めをしていないか
  • 注文→伝票→会計の流れと管理はどうなっているか
  • 席は何席あるか
  • 従業員は何人いるか・ホールとキッチンで何人ずつか
  • 予約はどうやって受けているか
  • おしぼり・お通しを出しているか
  • 箸は割り箸か

 

などなど、様々なチェックをしていると考えられます。

 

実際にお店を見てみて、不正が行われていないか?申告されている売上や仕入、給料の金額はおかしくないか?などの考察を行っているでしょう。

もし、調査官の方の注文に対し、伝票を書かない・レジを打たずお金はポケットにしまうようなことを行ってしまったら…?

 

「書類は捨ててしまった」は通らない。青色申告の取り消しと推計課税の恐ろしさ

「売上抜いたってレジペーパーや伝票を捨ててしまえば、不正は立証できないだろう」と考える方もいるようです。

しかし、皆さんは青色申告を行っていると思いますが、青色申告の要件の1つに「帳簿書類の保存義務」というモノがあります。

青色申告は、自主的に正確に税金を計算する納税者に対しては一定のご褒美をあげますよ、という趣旨の制度です。

申告内容が正確である証拠として、帳簿書類などを保存しておく必要があるわけですが、それらの書類が無いとなると、青色申告を取り消される可能性があります。

(正確に言うと白色でも帳簿書類の保管義務はありますが)

 

青色申告を取り消されると、推計課税といって、税務署側がおおよその所得(儲け)の金額を推定して課税する場合があります。

推定の方法としては、

 

  • 仕入の請求書の材料費から逆算された売上金額が申告された売上金額とつじつまがあうか
  • メニュー表からおおよその客単価を算出
  • 年間に仕入れたおしぼり・お箸の数で大まかな客数の把握
  • 予約表やカルテから客数の把握

 

パッと思いつくのはこの辺りです。

1人当たりの単価と年間のお箸の仕入れ量や、1個当たりの原価から逆算したりするわけです。

書類がない=反証する根拠もないわけですから、かなり厳しい課税がされることが多いようです。

(税理士が関与している場合はこれを食らうことはないでしょうし、ボクも聞いた話ですが。。。)

 

ここでは割愛しますが、もし消費税の課税事業者の方が書類を捨ててしまっている場合は更に悲惨です。

 

隠ぺいなら重加算税、結局損する

税務調査で申告漏れなどが発覚すると、本来払わなければいけなかった税金に加え、

 

  • 過少申告加算税
  • 無申告加算税
  • 不納付加算税
  • 重加算税
  • 延滞税

 

など、罰金的な性格を持つ税金を払うことになります。

 

その中でも怖いのが、重加算税。なんと税率は35%です。

所得や税金計算上に必要な情報を隠ぺいしたり、嘘をついていたりすると、重加算税の対象になってしまいます。

 

本来1,000万円の税金を払わなければいけないのに、500万円で申告し、税務調査で500万円の申告漏れが発生したとすると、

本来払うべきだった500万円に加え、75~200万円程度の罰金も払うことになります。

 

こと税務調査においては、正直者が馬鹿をみるといったことはありません。

 

 

最初から真面目に申告することこそが、結局は一番手元にお金が残ります。

 

「家事消費」の計上を忘れないようにしよう

お店の商品を自分の家のモノにしたりした場合、「自分or身内だからお金は貰わない・レジも打たない」みたいなケースもあるかと思います。

しかし実は、これらも「家事消費」といって、売上に計上しなければなりません。

代表的なのは、飲食店をやっている方が、売れ残った食材を自分の家庭のご飯にした場合でしょうか。

あとは小売店をやってる場合、商品を自分の家で使うことにした場合とかですね。

家事消費に対する仕入は実質的には生活費ですから、生活費を経費にしちゃうとマズいよっていうことです。

 

仕入れ値or販売価格の70%のいずれか多い金額を売上金額として計上すればOKです。

 

仕訳は

事業主貸 / 売上

となります。

 

「面貸し」をしている美容室の場合の注意点

いわゆる面貸しさんは「従業員に対する給料」ではなく「外注さんに対する外注費」です。

報酬も、源泉所得税を引いたりはしてないでしょうし、消費税を乗せた金額を支払っていると思います。

ですが、形式上面貸しの形をとってはいるけど、実質的な形態が従業員と変わらない場合、給与として源泉徴収義務が発生したり、消費税の税額控除が認められないことが考えられます。

 

対策としては、

 

  1. 面貸しスタッフと契約書を交わし、毎月請求書を貰うこと
  2. 道具や材料は自分持ち、ミスしたときの責任も自分で負ってもらうこと

 

が挙げられます。

 

詳しくは以下の記事を参考にしてみてください。

 

 

在庫の形状も忘れずに行いましょう

個人事業主なら12/31、法人なら期末において、在庫の棚卸をする必要があります。

 

美容室なら物販用のシャンプーやワックス、業務用のカラー剤など。

小売店なら売り物の商品。

これらを商品ごとに数を数えていくことになります。

手書きで十分(むしろ手書きのほうが調査官の方は喜んだりします)ですから、必ず全ての商品の数を記録して残しておきましょう。

 

経理処理としては、それぞれの商品の単価(仕入れ値)×その商品の数=、の金額で在庫の商品全体の合計金額を出し、

その金額で、

商品 / 期末商品棚卸高

という仕訳を切りましょう。

 

仕入をした商品は、期中において

仕入 / 現金預金(あるいは買掛金)

のような仕訳で、経費として計上されています。

しかし、まだ売れていない商品は、当期の経費にはなりません。

ですから上記の

商品 / 期末商品棚卸高

という仕訳を切っておくことで、まだ売れていない商品は今期の経費から除外し、翌期に繰り越すことになります。

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この記事を書いた人 入野 拓実
独立4年目の31歳。自称「とっつきやすい系税理士」
中小企業やフリーランスの税務顧問、相続税申告のほかに、
自力申告・独立支援・法人化などのコンサルティング業務を行っています。
各種セミナー、執筆実績多数。
1989.3.6生まれ。妻・娘と3人暮らし。
スーツよりセットアップ派。
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※当ブログの記事は、投稿日現在の法律に基づいて書いております。 改正や個別的なケースには対応していない場合もありますので、ご注意ください。



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