個人事業主・法人が行うべき消費税の節税対策をまとめてみました。
消費税を減らす方法をざっくり区分すると、以下の3つです。
- 全ての会社が検討すべき → 納税義務の免除制度の活用
- 売上5,000万円以下の場合に検討すべき → 簡易課税制度の活用
- ①②以外 → 一般課税の場合に検討すべきこと
当てはまる部分を読んでいただければと思います。
まぁ正直、目新しい内容やウルトラCなんてのは存在しませんが…(消費税に限らず)。
1:納税義務の免除制度をフル活用する
最も有効なのは、納税義務の免除期間を最大限に活用することです。
1-1:売上を1,000万円以下に抑える
消費税が課税されるのは、原則として、2年前(基準期間)の課税売上高が1,000万円超の事業者です。
消費税の納税義務について解説|課税事業者と免税事業者の判定基準
「売上1,000万円を超えるか超えないか微妙」という場合には、あえて仕事量を減らして売上1,000万円以下に抑える、のもアリです。
今年の売上が1,000万円であれば、2年後の消費税の支払いが免除されます。
売上1,000万円の事業者が簡易課税を使った場合、消費税額は業種ごとに以下のようになります。
業種(簡易課税事業区分) | 消費税額 |
卸売業(第1種) | 99,900円 |
小売業(第2種) | 199,900円 |
製造業、建設業(第3種) | 299,900円 |
その他…飲食店など(第4種) | 399,900円 |
サービス業(第5種) | 499,900円 |
不動産業(第6種) | 599,900円 |
この金額が浮くのは大きいのではないでしょうか。
売上1,000万円ギリギリのとき、消費税はいくらになるか計算してみた
2023年10月からスタートする「インボイス制度」の影響で、この方法が使いにくくなる可能性があります。
売上1000万円以下のフリーランスと消費税インボイス制度。課税事業者と免税事業者のどちらを選ぶか
1-2:設立1期目を7ヵ月以下にする
基準期間(2年前)の売上が1,000万円以下であっても、特定期間(前期スタートから6ヵ月間)の課税売上高or給与支払額が1,000万円を超える場合には、消費税の課税事業者となります。
ただし、前期が7ヵ月以下の場合には、特定期間とはなりません。
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例えば、法人設立1期目の特定期間の売上&給与が1,000万円を超えると、2期目から消費税の課税事業者となります。
そこで、設立1期目を7ヵ月以下にして設立します。
すると、1期目は特定期間となりませんから、課税事業者となるのは通常通り3期目から。消費税の免税期間を最大1年7ヵ月まで伸ばすことができます。
法人の1期目を7ヵ月以下にして消費税の免税事業者の期間を最長にして節税
1-3:資本金を1,000万円未満に抑える
期首の資本金が1,000万円以上の新規設立法人は、基準期間の売上にかかわらず、設立1~2期目から消費税の課税事業者となります。
ですから、「資本金は1,000万円未満で設立する」のがセオリーです。
ただし、人材派遣業など縛りがあるケースは、資本金1,000万円以上で設立せざるを得ないでしょう。
その場合には、「1期目の途中で減資する」という方法があります。
「期首」の資本金が1,000万円以上かどうかで判定されるわけですから、1期目の途中で減資すれば、2期目の期首は1,000万円未満です。
この場合、1期目は課税事業者となりますが、2期目は免税事業者となります。
期 | 資本金 | 納税義務 |
1期目 | 設立時2,000万円→減資900万円 | 有り |
2期目 | 期首900万→増資2,000万円 | 無し |
1-4:法人成りor個人成り
個人事業主として消費税の課税事業者である場合、法人成りすることで免税事業者になることができます。
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個人と法人は別人と考えるためです。個人側で2年前の売上が1,000万円を超えていても、法人側では超えていない、と考えます。
なお、法人から個人事業主に戻る「個人成り」を検討するケースもあります。
2:簡易課税制度を利用する
消費税の計算方法には「一般(原則)課税」と「簡易課税」の2種類があります。
基準期間の課税売上高が5,000万円以下であれば、「簡易課税制度」を選ぶことが可能です。
簡易課税制度とは?計算方法から届出書まで、全体像をざっくり解説
僕の経験上、「7~8割の事業者は簡易課税制度のほうが税金が安くなります」。
理由は、簡易課税制度の「みなし仕入率」と、実際の仕入率に差があることです。
簡易課税制度では、業種ごとに以下の割合で仕入税額控除(払った消費税を差し引くこと)を行います。
業種 | みなし仕入率 |
卸売業(第1種事業) | 90% |
小売業(第2種事業) | 80% |
製造業、建設業等(第3種事業) | 70% |
その他(第4種事業) | 60% |
サービス業(第5種事業) | 50% |
不動産業(第6種事業) | 40% |
みなし仕入れ率 > 実際の課税仕入の割合(売上比)
であれば、簡易課税がお得、ということです。
例えばサービス業の場合、経費の大部分が人件費=消費税のかからない経費です。
消費税のかかる仕入や経費の割合が、「売上比で50%」になることは、まずありません。ですから、ほとんどのケースで簡易課税がおトクになります。
もちろん、一般課税が有利になるケースも存在しますので、比較することは欠かせません。
基準期間の課税売上高が5,000万円以下であれば、一般課税と簡易課税でどちらが税額が安くなるか、検討してみましょう。
3:一般課税の場合に検討すること
一般課税の場合に考えられる手段は、次のようなものがあります。
3-1:個別対応方式を採用する
課税売上割合が95%未満の場合や、課税売上高が5億円超の場合は、
- 個別対応方式
- 一括比例配分方式
のいずれかの方法で仕入税額控除を計算します。
多くの場合で個別対応方式の方が税金が安くなります。
どちらが有利か比較することは欠かせません。
3-2:外注、派遣を検討
給与には消費税がかかっていません。
それに対し、外注費には消費税がかかっています。税額計算上、その消費税を差し引くことができます。
したがって、人を雇わずに外注でまかなうことができれば、消費税の計算上は有利です。
ただし、実質的に雇用関係にあるのに外注費として処理すると、否認される可能性があります。
- 指揮監督命令下にある
- 材料や用具を供与されている
といった場合には、雇用関係=給与として認定され、消費税の税額控除は認められません。
単に雇用契約書を業務委託契約書に書き換えればいい、というわけではありません。
3-3:印紙は金券ショップで買う
セコい話ですが、印紙を金券ショップで買うと、課税仕入になります。
契約書の印紙税節税策としてのクラウドサイン&金券ショップ活用術
3-4:事業ごとに会社を分ける
事業ごとに会社を分けることで、95%ルールの適用、簡易課税の適用などの恩恵を受けられる場合があります。
(節税目的で会社を分けることは個人的にはオススメしませんが)
まとめ
法人税の節税の多くは課税の繰り延べ(当期の税額は減るが、来期以後に結局払う)です。
それに対して消費税の節税は、後から払うようなものは、原則としてありません。
税理士が関与している場合、検討済みのものばかりかと思います。
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