会社設立・法人成りで損しないために事前に押さえておきたい注意点




会社設立・法人成りには、いくつか注意すべきポイントがあります。
知っているか・知らないか。それだけの違いで、大きな差がついてしまうようなものもあります。

今回は、設立前に注意すべき、知っておきたいポイントをまとめてみます。

合同会社か株式会社か

まず最初に考えておきたいのが、合同会社にするか、株式会社にするか。
ざっくり比較すると、両者には次のような違いがあります。

株式会社合同会社
設立費用20万円ちょっと6万円ちょっと
信用力あるない

株式会社は、設立費用が14万円高くつくかわりに、信用力があります。

「一人で仕事をしているフリーランスが節税対策や社会保険加入のために設立する法人」という場合、信用力が問題になることはないでしょうから、合同会社で問題ないと考えます。
逆に、「人を雇ったり、拡大したりする」という場合は、株式会社がベターです。

最初は合同会社で後から株式会社に変更することもできますが、手間・お金を考えると、設立前の方向性に則って選択したほうが良いです。

社会保険の強制加入

個人事業主は、雇っている従業員が少なければ(5人未満なら)社会保険に加入する必要はありません。
しかし法人は、従業員がひとりであっても(自分だけであっても)社会保険に強制加入です。

社会保険料は会社と個人が半分ずつ負担しますから、人を雇っている場合、従業員の社会保険料を半分負担する必要が出てきます。

例えば、給料25万円の従業員を3人雇っている個人事業主が法人成りした場合。
会社が負担する一人あたりの社会保険料は、1ヵ月約34,000円。
34,000×3×12か月で、年間約122万円の社会保険料を負担する必要が出てきます。

自分ひとりで仕事をしているなら、

  • 給料の額を低く設定して社会保険料の負担も抑える
  • 将来貰える年金も増える、と考える

など、自分のことだけを考えて納得いくラインを設定することもできます。
しかし、人を雇っている場合は従業員に対する責任があります。雇用主側の都合を従業員に押し付けるわけにはいきませんから、社長個人が身を切らなくてはならない場合も出てくるでしょう。

もちろん社会保険に加入したほうが従業員は喜びますし、人も雇いやすくなります。
しかし、いくらくらい払う必要があるのか、採算は合うのか、ということを事前に確認しておくことも大切です。
「加入したはいいけど、払えなかった」では済まないですし、「法人成りするけど加入しない」も無理ですし。

資本金をいくらにするか

損をしないためには、資本金もじっくり考えてから決める必要があります。

基本は1千万円未満

設立時の資本金は1,000万円未満にするのが無難です。

基本的に、会社を設立してから2年間は消費税の納税は免除されています。
しかし、資本金1,000万円以上で設立すると、免除されません。1年目から消費税を支払う必要が出てきます。
ですから、とりあえず1,000万円未満で設立する→2期目以後必要に応じて増資、という順序が無難でしょう。


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なお、均等割(赤字でも毎年かかる税金)を抑えるという意味合いもあります。
1,000万円以下なら年間7万円ですが、1,000万円超だと18万円になってしまいます。

詳しくはこちらの記事で解説しています:会社設立・法人成り。資本金はいくらがいいのか?

少なすぎもダメ

かといって、資本金が少なすぎも考えものです。

立ち上げたばかりの会社はまだ実績が何もありませんから、資本金で信用力を見られることも多いものです。
資本金が少なすぎると、融資や営業面で不利になる可能性があります。

次に、単純に元手が少なすぎると、すぐに資金がショートしてしまいます。
そういう場合、社長が会社にお金を入れて仕事を回していくことになります。
社長が入れたお金は、会社からすると社長に借りているお金。借りているお金が多すぎると印象が悪いですし、事務処理も面倒です。
入れるお金があるなら、それを最初から資本金にすることも検討しましょう。

借りたお金はダメ

借りたお金(返す必要があるお金)を資本金にするのはやめましょう。

こういうお金を資本金にした場合、登記が済んだらすぐに会社から出金するでしょう。
いわゆる見せ金ってやつです。

「借りたお金を返しただけ」と思うかもしれませんが、資本金は会社のお金ですから、逆に会社が社長にお金を貸している、と財務的には考えます。
貸したお金には利息が付きますし、「貸付金」として会社のバランスシートに載ってしまいます。
これが載っていると、金融機関の印象は最悪で、融資に非常に不利になります。

株主・出資者は自分一人にする

株主は自分ひとりが基本です。

会社は社長のものではなく、株主のものです。
「お金は出すけど口は出さないよ」と最初は言っていても、わからないものです。


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そして、会社が成長していくと、株の価値も上がっていきます。株を買い戻す時の金額も増えるということです。
最初は1株5万円で出資してもらった株が、1株50万、100万円になることだって考えられます。

安易に他人に株を持ってもらったばっかりに、経営方針や株の売買の問題で揉めるケースが多いものです。
他人に出資してもらうのは避けましょう。配偶者と持ち合うくらいなら良いんでしょうけど。

創業融資を受ける

会社を設立したら、創業融資を受けることをオススメします。

「いきなり借金なんて…」と思うかもしれませんが、事業を行う上で借金をするのはとても大切なことです。
少額でも早めに経験しておき、借金や金融機関(公庫)との付き合い方を覚えるべきです。

「自己資金で大丈夫。必要ないよ」と思うかもしれませんが、今後事業を何十年も行っていく上で、一度も融資に頼らないというのは難しいでしょう。
事業には良いときもあれば、悪いときも必ずあります。
全て自己資金でまかない、一度も借入しないというのは、理想ではありますが、現実的ではありません。

「足りなくなったら借りればいい」と思うかもしれませんが、お金が足りないとき=業績が悪いときです。
業績が悪いときには、銀行はお金を貸してはくれません。ですから、借りられるときに借りる必要があります。
創業融資は、「営業実績」ではなく「営業計画」で借りることができるので、借入の最初にして最大のチャンスです。

早めに返済実績を作っておくことも、会社の将来にプラスになります。

決算月をいつにするか

決算期をいつにするかも、「なんとなく」ではなく戦略的に決めるべきです。
具体的には、次の2つのポイントのバランスを考えて決定しましょう。

一番暇な月を選ぶ

忙しい時期よりは、暇な時期のほうが良いです。

決算の前後1ヵ月くらいの期間は、決算対策に時間を割くことになります。
この時期が繁忙期だと決算どころではなくなってしまいます。
結果、節税対策・事業計画などがグダグダになってしまう恐れがあります。

決算は、社長・税理士・経理部員の3者が、それぞれじっくりとコミュニケーションを取って行うものです。
決算に時間を割くことができる時期を決算月にしましょう。

詳しくはこちら:決算期はいつにする?

一番お金を持っている月を選ぶ

金融機関からの印象を良くするために、決算書の見栄えが良い月を選ぶという考えもあります。

たとえば、現金・預金の残高が一番多くなる月です。
1月が一番売上が多く、売掛金の回収が翌々月の場合は、3月決算がもっとも現金・預金が多いはずです。
これが1月決算だと売掛金が多くなってしまいますし、12月決算だと在庫が多くなってしまいます。

銀行目線に立つと、売掛金や在庫は粉飾の可能性があります。
しかし、現金・預金の残高は誤魔化しようがなく、信用できる数字です。

他にも、特定の月に支払が増えたり、投資を行ったり、など、会社特有の事情もあるかもしれません。
金融機関からの印象のために、決算書の見栄えが良くなる時期がいつなのかを様々な角度から考えてみましょう。

ただし、「最も売上が多い月」は、最低でも決算月の2カ月前には終わるようにしましょう。
最も業績の良い月が終わっていないと、決算予測・対策が難しくなるからです。

所得を分けられないか考える

法人成りをする場合、フリーランス時代の仕事のすべてを法人に移行するケースが多いかもしれません。
ですが、大部分は法人に移し、一部は個人のまま、という方法を取るべき場合もあります。

例えば、全てを移行すると売上が1,000万円を超える場合。
そのままだと消費税の課税事業者になりますが、一部を(あくまでも合理的な理由で)個人に残せば900万円くらいに抑えられるのであれば、法人・個人共に消費税は免税となります。

例えば、夫婦それぞれで別の仕事をしている場合。
夫婦の仕事をまとめて1つの会社にするのか、別の会社にするのか、どちらかだけ会社にするのか。
このあたりも検討の余地があるでしょうね。

所得を分けることで、税金が抑えられる場合もあります。
全ての所得を法人にまとめる必要があるのか、考えてみましょう。

1期目を何カ月にするか

消費税の免税期間をフル活用するためには、1期目を何カ月にするか(1期目の決算月をいつにするか)を考える必要があります。

消費税は基本的に設立してから2年間は免税です。
しかし、1期目の上半期(設立してから6カ月間)の売上高と給与の金額の両方が1,000万円を超える場合、2期目から課税事業者になってしまいます。
その場合、1期目を7ヵ月以下にすることで、2期目も免税でいることができます。
何も考えないと12ヵ月しか免税でいられませんが、一工夫すれば7ヵ月+12ヵ月=19カ月免税でいられるわけです。

逆に、上半期の売上高も給与も1,000万円を超えないのであれば、1期目を12ヵ月にし、24カ月間フルで免税でいるほうがトクです。

詳しくはこちら:法人の1期目を7ヵ月以下にして消費税の免税事業者の期間を最長に


[編集後記]

月曜日と火曜日は、新規クライアントとの打ち合わせ&契約手続きを1件ずつ。昨日は、事務所作業。
外で打ち合わせをする時は駅前のコメダ珈琲を利用することが多いのですが、狭い席しか空いていなかったり、お昼から夕方までは混んでいたりするので、別の場所を開拓しようかなーと。

駿河屋でとあるPCゲームを購入。届くのが楽しみです。

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この記事を書いた人 入野 拓実
独立4年目の31歳。自称「とっつきやすい系税理士」
中小企業やフリーランスの税務顧問、相続税申告のほかに、
自力申告・独立支援・法人化などのコンサルティング業務を行っています。
各種セミナー、執筆実績多数。
1989.3.6生まれ。妻・娘と3人暮らし。
スーツよりセットアップ派。
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※当ブログの記事は、投稿日現在の法律に基づいて書いております。 改正や個別的なケースには対応していない場合もありますので、ご注意ください。



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