法人化(成り)した年の確定申告の注意点。在庫・固定資産・借入金の引継ぎ、売上と経費の区分、予定納税。




法人化したフリーランスが、最後の確定申告をするときの注意点をまとめてみました。

法人化すると、税務調査が来やすい?

法人化をした個人事業主のところには、税務調査が来やすいと言われます。

理由としては、

  • 税務調査に入る最後のチャンス
  • 法人化は特殊な処理が多いため、ミスが起こりやすい

といったところだと思われます。

その人の個人事業主としての最後の申告となるわけですから、税務調査に入る最後のタイミングです。
そして、法人化した年の確定申告は、難しいポイント(後述)が多いため、ミス=税金の納め漏れ、が起こりやすいと考えられているのでしょう。

というわけで、個人事業主としての最後の確定申告は、慎重に・正確に行ったほうが良いでしょう。

個人事業主としての最後の確定申告の注意点

最後の年の確定申告には、次のような注意点があります。

確定申告を忘れずに行う

年の途中で法人化した場合は、その年の1月1日から法人化した日までは個人事業主なわけですから、その期間の所得について確定申告をする必要があります。

例えば、2019年4月に個人事業主を廃業 → 法人に事業を引き継いだ場合は、
2019年1~3月の所得について、2020年3月15日までに確定申告をする必要があります。

売上・仕入などの漏れがないようにする

売上などの漏れがないように気を付けましょう。
最後の年ですから、「翌年で辻褄合わせればいっか」ということもできませんし。

注意すべきなのは、売上代金が翌月以後に入金されるケース。
例えば、3月に仕事をした分が、4月15日に振り込まれるような場合です。

この場合、入金された4月ではなく、仕事をした3月の売上になります。
この件については、以下の記事で詳しく書いています。

フリーランスのイラストレーター・デザイナーが自分で確定申告する場合の注意点・よくある間違い

給与所得を忘れないようにする

最後の年は、個人事業主としての「事業所得」だけでなく、会社からもらう給料の「給与所得」の申告も必要です。


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会社と個人の線引きをする

個人の申告に、会社の売上や経費が混ざりこまないようにしましょう。

  • 会社設立日の前後で書類を分ける
  • 会社・個人のレシートを仕分ける

などの工夫が必要です。

在庫の引継ぎ

個人事業主時代の在庫を法人に引き継ぐ場合、「個人から法人への売却」という形を取ります。

「自分から自分の会社への引継ぎなんだから、タダでいいじゃないか」と思われるかもしれません。
しかし、いくら自分の会社であっても、個人と法人は完全に別人なので、そうもいかないのです。

どういうことか、めちゃくちゃざっくりと説明してみます。

仮に、売値で100万円の在庫をタダで会社に引き継いだとすると、「個人から法人へ、100万円の贈与があったんだな」と税務上は考えます。


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税金の世界は、「恣意的な価格設定」や「第三者間なら考えられない、身内だからできる取引」を、とても嫌います。
自分と自分の会社の取引であろうと、しっかりとした値付けで、正当な取引をしてほしいわけです。

結論としては、タダで引き継いだとしても、

  • 個人側…100万円の売上があった
  • 法人側…100万円をタダで貰った

と考えて、個人・法人両者でそれぞれ100万円が課税対象になってしまいます。
(実際に引き継ぐ場合には、売値の7割以上で引き継げば問題にはなりません)

そうならないためにも、個人が売って、会社が仕入れた、という形を取りましょう。
もちろん、その売上は個人の利益(所得)として所得税の対象になります。
消費税を納めている人であれば、売上の8%分は消費税の対象にもなります。

固定資産の引き継ぎ

在庫と同様、備品や車などの固定資産についても、会社に引き継ぐ場合は「売却」という形を取ります。
ここでもやはり、タダとか、あからさまに安く、というわけにはいきません。原則として時価(第三者に売るときの金額)で売買を行います。

時価がいくらか…というのは明確な答えがなく、難しい問題ですが、貸借対照表に載っている帳簿価格が参考になります。

固定資産の売却は、個人事業主としての「事業所得」ではなく、「譲渡所得」として申告します。
売却代金は消費税の対象にもなります。
譲渡所得と消費税の申告漏れが多いようですので、気を付けましょう。

ちなみに、土地や建物など高額な固定資産は、引き継がずに「個人から法人に貸す」という形を取ることが多いです。

(このあたりはケースバイケースなので、顧問税理士などにご相談いただければ)

在庫や固定資産が少ない業種(税理士もそうですが)の方は、あまり気にする必要はないかな、と。

借入金の引継ぎ

個人の借入金を法人に引き継ぐ場合も、注意が必要です。

ケースによっては、社長が自分の借金を不当に会社に支払わせている、
つまり「会社のお金を社長個人が不当に使っている」=そのお金は社長に対する賞与、という指摘をされることがあります。

借入の名義自体は銀行で割と簡単に変えられちゃうんですけど、銀行はこういった注意喚起はしてくれないので、ご自分で確認しておきましょう。

予定納税をストップしておく

確定申告である程度の所得税を納める人は、7月と11月に前年の所得税の3分の1を前払いします。
そして、翌年3月の確定申告で、前払いした税金を精算するわけです。

この前払いを「予定納税」といいます。

法人化をした場合、個人事業主は廃業となるわけですから、最後の確定申告が終われば、もう予定納税をする必要はありません。
ですが、税務署から予定納税の案内が届いてしまう場合があります。

そのまま支払っても、還付で戻ってくるので、損することはありませんが…
「予定納税の減額申請書」(下記リンク参照)という書類を提出することで、予定納税をストップすることができます。

参考:国税庁リンク


[編集後記]

昨日は、クライアントとランチミーティング。柏駅前のbottegaです。
その後、軽く駅前をブラついてから、真面目に仕事しましたw

娘の幼稚園が始まりました。園バス、初日はちょっと不安そうにしてましたが、2日目からはめちゃくちゃ笑顔で手を振ってきます。
楽しんでいるようで、良かったです。

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この記事を書いた人 入野 拓実
独立4年目の31歳。自称「とっつきやすい系税理士」
中小企業やフリーランスの税務顧問、相続税申告のほかに、
自力申告・独立支援・法人化などのコンサルティング業務を行っています。
各種セミナー、執筆実績多数。
1989.3.6生まれ。妻・娘と3人暮らし。
スーツよりセットアップ派。
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