フリーランスの月次決算・納税予測入門|確定申告前に税金をいくらくらい払うか知っておこう




フリーランスも月次決算・納税予測をやっておくべきです。
シンプルな月次決算・納税予測の具体的な手順をまとめてみました。

※記事最下部にExcelテンプレートも置いておきますので、ご参考までに。

「確定申告の時にまとめて」はダメ!

フリーランスの方は、確定申告の時期に1年分をまとめて処理する方が多いのではないでしょうか。

税理士の関与がある場合には、定期的に数字をまとめて報告を受ける、
いわゆる「月次(げつじ)決算」を行っているケースが多いかと思いますが、

ご自分で経理をされている方で、月次決算を行っている方は少数派な印象です。

 

結果、確定申告をするまで、

  • どれくらい売上があるのかわからない
  • 税金をどれくらい払うのかわからなくて不安
  • お金の増減の原因がわからない

といったことが起こりがちです。

定期的な月次決算を行うことで、「売上・税金・お金」の3つの状況を整理し、コントロールする必要があります。

売上と利益がどれくらいになるか、税金をどれくらい払うことになるか、資金繰りは大丈夫か、事前に確認しておくのです。

確定申告をぶっつけ本番で迎えるから不安になるわけで、
数ヶ月前から準備しておけば「売上・税金・お金」の不安は少なくなります。

フリーランス(個人事業主)の月次決算・決算予測の手順

フリーランスの月次決算、決算予測の手順について、最もシンプルな例でまとめてみます。

STEP①:月次決算を行う時期

「月次(げつじ)」というくらいですから、毎月やるのが原則ではあるのですが、
フリーランスの場合、夏~秋ごろに1度やるだけでもある程度の効果があります。

「確定申告の前に一度状況を整理しておく」というのが大切です。

特に今の時期(10-11月)はいいタイミングかと。

STEP②:会計ソフトに一通り入力する

直近の月末までのデータを、一通りお使いの会計ソフトに入力していきます。


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今日(10/29)に行う場合は、9月末まで。
11/1まで待って、10月末まで入力してもいいでしょう。

12月になってから11月末までまとめる…のでは少し遅いです。
対策も何もできなくなってしまいますので。

STEP③:現在の状況を確認する

一通り入力(今回の場合9月末まで)したら、9月末までの状況を確認してみましょう。
会計ソフト上の「月次推移表」で確認するのがオススメです。

freeeであれば[レポート]→[月次推移]、MFクラウドであれば[会計帳簿]→[推移表]です。

損益計算書上では主に[売上高][経費計][営業損益(控除前所得)]の3点について、
毎月の推移と、一番右の[期間累計]で現時点での累計金額を確認します。

現時点での売上と利益がいくらくらいなのかを確認すると同時に、
毎月の推移を見て、違和感のある数字はないか(あればミスの可能性大)、無駄な経費を使っていないか、といったことを確認します。

STEP④:決算予測を立てる

現状を確認した後は、決算(確定申告で申告する数字)の予測も立ててみましょう。
今回は9月末までの数字を入力したわけですから、10~12月分の数字を予測し、ざっくりと1年分の数字の見通しを立てるのです。

freeeの場合、[月次推移]の画面右側[エクスポート]をクリック→[CSV形式でエクスポートー損益計算書]→[項目を整列する]にチェックします。勘定科目コードのチェックは入れません。

freeeからリンクのメールが届きますので、そのリンクからダウンロードできます。

PDF形式でダウンロード→印刷するのもアリ

MFクラウドの場合も、推移表の画面右上[エクスポート]から同様にダウンロードできます。

 

Excelでデータを開くと、次のような画面になっているはずです。

実際には、こんな数字だったとします。
(科目、数字は仮です。ブログ上見やすくするために少し加工しています)

1-9月と累計には、先ほど入力した数字がそのまま入っています。
10-12月は全てゼロになっていますので、この部分について予測値を入力していきます。

例えば、こんな感じです。

[売上]や[原価]はできる限り正確に予測すべきですが、
経費についてはざっくりでも構いません。

毎月定額のモノはそのまま数字を引っ張ればいいですし、
会議費交際費などの予測が難しいものは、1-9月の平均値を使います(AVERAGE関数)。

今回の[支払利息]のように数字が小さいものは、ざっくり毎月1,000円としてもかまいません。
PC購入など大きな金額が動くものについては、正確に予測をしておきます。

累計欄はSUMで1-12月の合計値を出しておきます。

※記事最下部でExcel配布します

決算予測を立てたことで、

  • 今年の売上は1,000万円を超えそう
  • 利益は830万円くらいになりそう

ということがわかりました。


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納税予測

決算予測が終わったら、税金の支払額の予測、すなわち納税予測も行ってみましょう。

予測すべき税金は、

  1. 所得税
  2. 住民税
  3. 事業税
  4. 消費税
  5. 国民健康保険

の5種類で、この合計金額が税金の支払額になります。

所得税の予測

所得税を計算するには、まず[課税所得]を計算する必要があります。
[課税所得]に税率をかけて税額を計算するからです。

※記事最下部で税額計算用のExcel配布します

フリーランスの[課税所得]は、以下の計算方法で算出できます。

  1. 事業の利益から青色申告特別控除(65万円)を差し引く
  2. ①の金額から各種所得控除を差し引く

 

今回の場合、事業の利益は830万円でしたから、そこから65万円を差し引いて765万円。
この金額からさらに、所得控除を差し引いて課税所得を計算します。

代表的な所得控除には次のようなものがあります。

  • 社会保険料控除:今年1年間に支払った年金、国保の金額の合計額を控除できる
  • 小規模企業共済等掛金控除:今年1年間に支払ったiDeCo、小規模企業者共済の合計額を控除できる
  • 配偶者控除:配偶者の所得が38万円以下(給与収入103万円以下)の場合、38万円控除できる
  • 扶養控除:扶養の範囲内の親族がいる場合、38万円控除できる
  • 基礎控除:誰でも38万円控除できる

イメージとしてはこのような流れです。

所得控除には他にも[医療費控除][生命保険料控除]など様々なものがあるのですが、
税金の予測計算への影響が少ないもの、レアなものは今回は省略しました。

事業所得765万円 ー 所得控除244万円 = 課税所得521万円

となります。

この521万円に税率をかけていきます。

所得税の速算表
課税される所得金額税率控除額
195万円以下5%0円
195万円を超え 330万円以下10%97,500円
330万円を超え 695万円以下20%427,500円
695万円を超え 900万円以下23%636,000円
900万円を超え 1,800万円以下33%1,536,000円
1,800万円を超え4,000万円以下40%2,796,000円
4,000万円超45%4,796,000円

引用元:国税庁 所得税の税率

521万円 × 20% -427,500円 =614,500円、が所得税の税額となります。
この金額を確定申告の期限である3/15までに支払うのです。

ここで計算した所得税の2.1%の[復興特別所得税]というものもありますが、今回は省略

なお、売上から所得税を源泉徴収されているフリーランスの方も多いかと思います。
その場合、ここで計算した所得税の金額から、源泉徴収された金額を控除した差額を納めることになります。
(源泉徴収された金額のほうが多い場合には、差額が還付されます)

住民税の予測

住民税は、先ほど計算した課税所得のざっくり1割だと覚えておきましょう。

基礎控除・配偶者控除・扶養控除が所得税は38万円、住民税は33万円など、細かな違いはありますが、
税金予測をざっくりと行うだけであれば、気にしなくてもかまいません。

521万円 × 10% =521,000円 を納めることになります。
確定申告後、6月頃に自治体から納付書が届きますので、年4回にわけて支払っていきます。

事業税の予測

事業の利益が290万円を超える場合、事業税もかかってきます。

事業税には青色申告特別控除の適用はありませんので、
青色申告特別控除65万円を差し引く前の、事業の利益が290万円の場合です。

事業税=(事業の利益 ー 290万円) × 5%

で計算します。
(多くの業種で、税率は5%です)

今回の場合は、(830万ー290万)×5%=27万円 を納めることになります。
年に2回、8月と11月の2分割で支払うことになります。

消費税の予測

原則課税(一般課税)の場合、バランスシートの[仮受消費税]から[仮払消費税]を差し引いた金額が納税額となります。
今回の場合、その金額は9ヵ月の納税額ですので、12ヵ月になおしてざっくり予測します。
(9で割って12をかける)

簡易課税を選択している場合、売上の金額からざっくり税額を予測します。

  1. 売上を税抜金額になおす
  2. 控除対象仕入税額を差し引く(サービス業の場合50%)
  3. 税率をかける

という手順でざっくり予測できます

※計算の流れのイメージ。記事最下部で配布します

以下の記事でも解説しています。

月次決算(試算表)で、税金(法人税・消費税・源泉税)をどれくらい払うかざっくりと予測する方法

消費税の経理方式は、税込ではなく税抜を選択しよう

国民健康保険の予測

国民健康保険は自治体によって率が異なるため、各自治体HPから計算式を確認して頂ければ。

まとめ・Excelテンプレート

確定申告の時期になってはじめて税金の金額を知るから、「高い」「こんなに払えない」となってしまうのであって、
事前から予測をしておけば、

  • 消費税の課税事業者にならないために、売上1,000万円までに抑えよう
  • 税金200万円くらいかかりそう。今のうちから準備しておこう
  • こんなに利益が出るなら、必要なものを我慢する必要はないな
  • 小規模企業共済、増額しても良いかな

といった対策を考えることもできるのです。
心理的なダメージも軽減されます。

月次決算と予測、はじめてみていただければ。
(時期的にも今はちょうどいいですので)

Excelテンプレートダウンロード:フリーランス決算予測・納税予測


[編集後記]

昨日は、各種インプットを中心に。

娘の食事量がどんどん増えています。
普通に一人前ペロリと食べますし。
食べっぷりも良く、見てて気持ちいいです。

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この記事を書いた人 入野 拓実
独立4年目の31歳。自称「とっつきやすい系税理士」
中小企業やフリーランスの税務顧問、相続税申告のほかに、
自力申告・独立支援・法人化などのコンサルティング業務を行っています。
各種セミナー、執筆実績多数。
1989.3.6生まれ。妻・娘と3人暮らし。
スーツよりセットアップ派。
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※当ブログの記事は、投稿日現在の法律に基づいて書いております。 改正や個別的なケースには対応していない場合もありますので、ご注意ください。



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