起業やフリーランスの青色申告に簿記3級の勉強は必要?税理士が徹底解説




「起業するなら、簿記は勉強しておいたほうがいい?」
「今年からフリーランスなんだけど、青色申告するなら簿記って必要?」
という質問を受けることがあります。

この質問をされるたびに、「自分でやってみよう!」という姿勢が素晴らしいなぁと思います。「数字とか申告なんて、経理や税理士にぶん投げとけ~」という方も多いですからね。

さて、結論から書くと、起業や申告において「簿記の勉強は必要」です。必須と言ったほうが正しいかもしれません。
ただし、簿記3級レベルの知識をある程度抑えるだけでOKで、合格する必要はありません。2級に関しては勉強する必要すらありません。

僕が今までお仕事でご一緒させていただいたクライアントには、

  • 簿記2級は取ったけど、数字が読めない
  • 3級のテキストかじっただけだけど、確定申告が自分でできる

といった方が何人もいらっしゃいました。

今回は、

  • 簿記の勉強が必要な理由
  • 合格する必要がない理由
  • 2級は勉強する必要がない理由
  • どうやって勉強したらいいのか

の4点について書いていきます。

簿記の勉強が必要な理由

簿記の基礎知識は「自分で申告するハードルが下がる」「会社を守る」ために必要です。

前提:簿記とは、会社の活動を記録するための「言語」である

まず前置きとして、「簿記ってそもそも何なの?」ってお話をさせてください。

一言でいうと、「会社の取引を記録しておく技術」です。
「帳簿」と言われるノートに、会社が行ったすべての取引を記録します。

例えば、1万円の商品を現金で売った場合、簿記では、

現金 10,000 / 売上 10,000

と記録します。

5万円で商品を仕入れて、代金は翌月に払う場合には、

仕入 50,000 / 買掛金 50,000


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と記録します。

簿記は、経済活動を記録するための、一種の言語です。
会社が行った取引を、「簿記語」に翻訳して、記録していくわけです。

この「簿記語に翻訳して記録」することを「仕訳」といいます。
簿記という言語を理解していれば、仕訳を一目見るだけで、会社が何をしたか?結果どうなったか?がわかるのです。

理由①:簿記の基礎がわかれば、確定申告を自分でするハードルが下がる

一般的なフリーランスの方であれば、簿記の基礎を理解していれば、自分で確定申告をすることは難しくありません。
簿記3級レベルの知識で、自分が行った取引のほとんどを、仕訳することができるはずです。

当然わからないことは出てきます。でも、基礎ができている人は、わからないことを自己解決できます。
わからないことは、その都度ググったり、本で調べたりして解決すればいいのです。

理由②:「数字のことは人任せ」では経営はできない

なぜ簿記の基礎を学ぶべきかというと、その先にある「会計」や「経理」を、経営者は理解する必要があるからです。

「簿記」という言語を習得することは、会計や経理を理解するのに必須です。
会計と経理を理解するっていうのは、いわゆる「数字が読める」「数字をもとに経営判断ができる」っていう状態です。

「数字とか申告なんて、経理や税理士にぶん投げとけ」ってスタンスの社長さんって、驚くほど多いんですよ。
でも、本来は、会社の数字を知らずに経営をすることはできないと思っています。

「簿記は、会社が行ったすべての取引を記録する」と上述しました。
ですから、事業の結果は、簿記を通して、すべて数字となって現れます。

  • いくら儲かったか
  • なぜ儲かったか
  • どれくらい財産が増えたか
  • なぜ増えたか
  • いくら投資したのか
  • そのリターンはいくらだったのか
  • 今キャッシュはいくら持っているのか
  • 今後どれだけ支払う必要があるのか

など、数字を見れば「何をしたか」「その結果どうなったか」だけでなく、「今後どうなりそうか」までわかるのです。
そこまでを理解したうえで、「じゃあどういう戦略を立てるか」という発想をすることが、経営をするということです。

利益を出したりお金を増やしたりするために事業を行っているのに、その結果である数字を人任せにするという姿勢は良くありません。

会社経営者だけでなく、フリーランスの方でも、こういった視点で数字を見ることは大切です。

経験上、経営者が経理をナメてる会社は伸びないです。
社長は、金融機関に自社の数字を説明できなければいけませんし、税理士や経理部と積極的にコミュニケーションをとって、会社の舵取りをするのが仕事です。

そういったことをこなすには、簿記の知識が土台となってきます。
だからこそ、しつこく簿記の重要性を書いています。あのホリエモンだって、簿記は大切と言っていますしね。

補足になりますが、社長が会計に対するリテラシーを持っておくことは、

  • ポンコツな税理士を見極められる
  • 銀行や不動産業者の口車に乗せられずに済む
  • しょーもないコンサルに騙されなくなる

といった作用もあります。

簿記3級に合格する必要がない理由

簿記の試験は100点満点中70点で合格です。でも、合格を目指す必要はありません。

理由①:簿記の試験は、使わない知識も多い

簿記の出題範囲には、現場で使わないものも数多く含まれています。

例えば、

  • 伝票会計→今どき使わない
  • 帳簿の締切、転記→会計ソフトがやってくれる
  • 精算表を作る→実務では作らない

などです。

こういった現場で使わない知識が試験対策上は重要だったりします。

もちろん、専門家を目指す場合はしっかり抑えておくべきですが…。
フリーランスの方や起業する方にとっては不要な知識です。会計ソフトがなく、紙で帳簿を付けていた時代なら大切でしょうけど。

理由②:簿記の試験で試されるのは、数字を「活かす能力」ではない

繰り返しますが、簿記は「会社が行った取引を記録する技術」です。
ですから簿記の試験では、取引を仕訳したり、試算表や決算書を作ったりする能力が試されます。

その記録を活かす能力、たとえば、

  • 経営分析
  • 決算予測
  • 資金繰り
  • 予実管理
  • 税金

といった、いわゆる「経理の力」は、簿記の試験では習いません。

3級どころか、簿記1級や税理士試験の簿記論に合格しているからといって、経理の能力があるとはいえないのです。

自分で申告する場合、決算書を作る能力はもちろん大切です。
ですが、簿記試験で学ぶ小難しいテクニックや理屈の話は、会計ソフトを使えば自動でやってくれたり、ハウツー本で解決できます。
ですから、実践での慣れのほうが大切です。

理由③:簿記の”基礎”を学ぶだけで良い

自分で申告をしたり、数字を経営に活かすための経理の力をつけるためには、簿記の合格よりも簿記の基礎力をつけることを目指すべきです。

下の画像は、簿記の試験範囲の表なのですが、


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引用元:商工会議所 簿記検定試験出題範囲表

赤枠で囲った部分は、簿記の仕組みとか、基本的な処理とか、簿記を実践で使っていく上でとても重要です。
先程からしつこく書いている、「簿記の基礎」的な部分です。

ただ、合否に関しては、赤枠で囲っていない部分で決まります。
そのあたりを勉強する時間を、会計ソフトで実践したり、経理の本を読むことに充てたほうが力はつきます。

2級は勉強する必要ない理由

2級は不要です。断言します。
理由は、「2級で勉強する範囲は現場で使わないから」です。

先ほどの範囲表をもう一度見てみましょう。今度は2級の部分です。

税効果だの、非支配株主持分だの、連結だの、何やらわけのわからないワードが並んでいます。
フリーランスの確定申告や、中小企業の社長が自社の数字を理解したり経理をする時に、こんな知識は使いません。

仮に2級の知識を使う場面があったとしても、簿記3級レベルの基礎ができている人であれば、ググったり本を読んだり人に聞いたりすれば解決できます。
それほど簿記3級で学ぶ基礎は大切なものです。

ちなみに、僕は仕事柄、簿記の試験問題を見る機会があります。
この間も、つい先日行われた簿記2級の問題を見ましたが…難しすぎです。
今の僕が試験対策をしないまま受験したら、おそらく合格できないでしょうね。そのくらい不要ってことです。

じゃあ簿記の勉強ってどうやったらいいの?

最後に、簿記の基礎を身に付けるための勉強の仕方について書いていきます。

ステップ①:簿記3級のテキストで勉強

まずは、やはり簿記3級用のテキストで勉強してみましょう。

良いテキストは、次のようなものです。

  • 簿記とは?資産とは?B/Sとは?簿記一連の流れ、のような、全体像や簿記の構造についてしっかり書かれている
  • 図解が多い
  • 例え話がピンときやすい
  • 説例が豊富

立ち読みで読み比べてみてください。

僕がちょっと立ち読みした中で一番良かったのは、これ↓です。

どのあたりの論点を重点的に勉強すべきかというと、先程の画像で赤枠で囲った部分です。

補助簿、伝票、転機、帳簿への締め切り、とかの手続き的な部分はサラッとにしておきましょう。
会計ソフトを使えるようになれば感覚的に理解できるようになる部分です。

試算表の作成、貸借対照表と損益計算書の作成は、簿記の仕組みを理解する助けになると思うので、少しやってみましょう。
精算表はスルーしてOKです。

あと、わからない部分が出てきても、そこで止まらないこと。
ガンガン進んで一通り勉強してしまいましょう。
簿記は全ての論点が繋がっているので、全体を見渡せるようになれば、躓いた部分が後から理解できたりします。

ステップ②:実践してみる

簿記の基本を理解した後は、ひたすら実践です。

フリーランスの方なら、自分で会計ソフトに入力してみて、確定申告書を作ってみましょう。
経営者の方は、経理部員や顧問税理士と積極的にコミュニケーションを取り、自社の数字を理解しようとしてみましょう。

ステップ③:ググる、本を読む、人に聞く

当然ですが、いきなり何でもこなせるようになるわけではありません。
ただ、簿記の基礎が身についていれば、調べて自己解決できるはずです。

「仕訳がわからない」「ソフトの使い方がわからない」のであれば、ググればたいてい解決します。
「確定申告書の書き方がわからない」「決算書の読み方がわからない」のであれば、本を読みましょう。
それでもわからないことは、経理部員や税理士に聞いてみましょう。

わからない→調べる→解決、を繰り返すことで、自分に必要な力がついていきます。


[編集後記]

お二人のクライアントから嬉しいご報告が。
僕も少しずつアガっていこうと思います。
どちらも東京だったり茨城だったりで近くはないのですが、独立当初から良くしていただけ。。ありがたいです。

マリオカートの休憩にゼノブレイド2をやっているのですが、積みゲーと化しそうです。。
僕、RPGが向いていないのかもしれません(;’∀’)キャラはみんな魅力的で好きなのですが…。

[パパ日記]

昨日は午後はオフにし、はじめて娘を幼稚園に迎えに行ってみました。
その後妻と3人でコメダでランチ。コメチキとミックスジュースが気に入ったようです。

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この記事を書いた人 入野 拓実
独立4年目の31歳。自称「とっつきやすい系税理士」
中小企業やフリーランスの税務顧問、相続税申告のほかに、
自力申告・独立支援・法人化などのコンサルティング業務を行っています。
各種セミナー、執筆実績多数。
1989.3.6生まれ。妻・娘と3人暮らし。
スーツよりセットアップ派。
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※当ブログの記事は、投稿日現在の法律に基づいて書いております。 改正や個別的なケースには対応していない場合もありますので、ご注意ください。



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