中小零細企業が不況や災害に耐えうる財務基盤を作る方法は、結局のところ1つしかない。




過去何度も書いていることですし、リアルでも何度も話していることなのですが、今このタイミングでもう一度記事にしてみます。

※どちらかというと花粉症対策で買っておいたはずのマスク…

新型コロナウイルス、台風15&19号、消費税増税etc…

新型コロナウイルスの流行により、さまざまなところに影響が出ています。

観光産業やイベント産業、輸出入が中心の産業などは、直接的な影響を受けているでしょう。

その他の業種も、稼働率の低下や休校の影響による人の確保、テレワークへの対応、消費の低迷などによる間接的な影響は避けられません。

 

僕自身は税理士という職種であり、かつ人を雇っていないことから、それほど影響を受けずに済んでいますが(娘の幼稚園が休園になったのでその対策はありますが)、クライアントのことを考えると、他人ごとではいられません。

どのクライアントも多かれ少なかれ悪影響を受けている印象です。

 

誰が悪いわけでもないですし、もちろん会社の努力不足でもありません。「どうしようもないこと」だけに、やりきれない思いがあります。

「どうしようもないこと」は避けられない

こういった「どうしようもないこと」で中小企業の業績が悪化してしまうケースは、過去にもありました。

 

記憶に新しいところで言うと、昨年の台風15号&19号です。

飲食や小売などサービス業全般は大打撃だったようですし、特に千葉県の房総方面に支店を持っているクライアントは、売上大幅減に加え事業所復旧に時間とお金を投入せざるを得ませんでした。

 

消費税増税による消費低迷もそうでしょうし、少しさかのぼれば東日本大震災やリーマンショックはその典型でしょう。

これらは、自分たちの力では「どうしようもないこと」です。

 

ですが、どうしようもないからといって、黙って潰されるわけにはいきません。

中小企業は大企業と違い、財務基盤と資金調達力が弱いため「どうしようもないこと」が致命傷になりかねません。だからこそ、「どうしようもないことに耐えうる財政状態づくり」を常に考えていく必要があります。


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「どうしようもないこと」に耐えうる財政状態をつくる

では、どんな会社が「どうしようもないことに耐えうる」のか。

端的に言うと、「儲かっているときにお金を貯め込んだ会社」です。

 

「何を当たり前なことを」と思われるかもしれません。

しかし、この当たり前のことを実践できる会社は一握り、というのが僕の実感です。利益が出たらすぐに、

  • こんなに税金払いたくない
  • 役員報酬増やしたい
  • 贅沢したい

と考えるのが人間です(僕もそうです)。利益が出たら出た分だけ使ってしまい会社の財務基盤は弱いまま。そんな会社をいままでたくさんみてきました。

 

だからこそ僕は「事業には調子が良い時もあれば悪い時もある」と、クライアントに何度もしつこいくらいお伝えし、利益を会社に貯め込んでもらうように促しています。

 

ちょっと例を出して考えてみます。

 

「調子が良い時」とは、

「日本経済が堅調で、自社のマーケティングの成果が出ており、取引先との関係が良好で、利益が出て、従業員が定着している状態」だとしましょう。

設立して3年経ったくらいで、このような状態になる会社が多いかもしれません。

この好調は、「これらのどれかひとつでも欠けたらダメ」という薄氷の上に成り立っています。特に「日本経済が堅調であること」は重要で、ここがグラつくと他の全てがダメになる可能性が高いのではないでしょうか。

 

そういった不確定要素が多い状況であるにもかかわらず、多くの会社は「調子が良い時」に、固定費を増やしますし、税金の支払いを避けようとしますし、社長は生活レベルを上げます。

もちろん、それ自体が悪いわけではありません。ただし、「財政状態が整っている」という条件付きで、です。

 

「業績が良く、儲かっている」ということと、「財政状態が良く、お金がある」ということは、全くの別物だと考えるべきです。


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具体的な数字で言うと、現預金は月商3ヵ月分以上、自己資本比率40%以上、ROA(総資本利益率)15%以上は欲しいところです(業種によって差はあります)。複数の金融機関との良好な関係も欠かせません。

とはいえ固定費増加は業績アップに欠かせないものですので、実際には財政状態と固定費増加の双方のバランスを考え、計画的に進めていきます。わかりやすくお伝えするために極論で書いていますが、実際には程度問題で考えます。

 

この数字をクリアしていないということは、すなわち、まだ財政状態が整っていない=お金を溜め込めていない、ということです。

多くの会社が、財政状態が整っていない=お金を溜め込めていないのに、固定費を増やし、税金を避け、生活レベルを上げてしまいます。すると「どうしようもないこと」が起きたときに苦しくなります。

 

固定費は文字通り「固定的な支出」ですから、業績が悪化しても簡単には減らせません。生活レベルも同様です。

減収になったとき固定費を減らせず赤字転落倒産、というのが中小企業の倒産の典型的なパターンです。

加えて過剰な節税で税金の支払いを避けていると、内部留保が薄く・金融機関からの評価も低くなりがちですので、資金繰りがショートするのも早まります。

 

「調子が良い時」にこそ、固定費の増加には慎重になり、税金を嫌いすぎず、生活レベルを上げすぎない意識が大切です。

「ウチの会社は儲かっている」だけではなく、「ウチの会社はお金をじゅうぶん溜め込めている」と言える状態を目指しましょう。

1~2年良かったからといって気が大きくならないために

過去何度か記事にしたこともあるのですが、僕はリーマンショックや東日本大震災で日本経済がガタガタな頃に税理士業界に入りました。

「借りたいのに借りられない」「顧問先が倒産した」みたいな話は日常的に聞いていました。それに対し、近年は比較的事業がしやすい世の中になったように思います。

 

ですが、景気は水物ですので、いつまた「どうしようもないこと」が起こるかわかりません。だからこそ、余裕のある好調時にこそリスクヘッジをしておくべきですし、財務基盤を固めておくべきではないでしょうか。
(リーマンショックを経験していない若い起業家さまは特に)

はっきり申し上げまして、1~2年儲かったからといってすぐに気が大きくなるようでは、「どうしようもないこと」は乗り切れません。

事業には調子が良い時もあれば悪い時もある、さらには「不況には逆らえない」ということを意識して、中長期的に考えていくべきです。

 

調子が良い時にこそ謙虚に、慎重になり、

  • 内部留保を厚くする(お金を貯めこむ)
  • 借りられるときに借りておく
  • 固定資産、固定費は計画的に増やしていく

といったことが基本戦略になるでしょう。

だからこそ月次決算で数字の推移を毎月チェックすること、指標を参考にすること等も欠かせません。

新型コロナウイルスで日本経済が停滞している今だからこそ、財政状態について考えるきっかけにしていただければ幸いです。僕自身も慢心しないように気を引き締めていきます。

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この記事を書いた人 入野 拓実
独立4年目の31歳。自称「とっつきやすい系税理士」
中小企業やフリーランスの税務顧問、相続税申告のほかに、
自力申告・独立支援・法人化などのコンサルティング業務を行っています。
各種セミナー、執筆実績多数。
1989.3.6生まれ。妻・娘と3人暮らし。
スーツよりセットアップ派。
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