会社設立前後の費用&資本金の仕訳と経理処理まとめ




会社設立前後の会計処理は、

  • 資本金
  • 個人と会社のお金が一緒になってしまっている
  • 創立費・開業費の扱い

など、特殊なものが多いため、簿記の知識がある人でも戸惑うようです。

今回は、これらの取引について、事例をまじえて仕訳を解説していきます。

資本金の処理方法と仕訳

会社設立時点では、資本金は出資者の個人口座に存在しているはずです。
(会社設立時に司法書士さんに「資本金を入金した通帳のコピーちょうだい」と言われたり、資本金払込証明書という書類を作ったりしましたよね。その口座です)

資本金はあくまで会社のお金ですから、会社の口座にできるだけはやく移すことをオススメします。

  1. 設立時、個人口座に資本金を入金
  2. 設立後、法人口座へ資本金を移す

ということを行う必要があります。

それぞれの時点の会計処理について、資本金が100万円と仮定して解説していきます。

設立日の仕訳(個人口座に資本金を入金した)

前提…発起人個人名義の口座に資本金100万円を入金した

借方勘定科目金額貸方勘定科目金額
預け金1,000,000資本金1,000,000

会社設立時点で、すでに資本金は会社のお金です。
ですが、まだ会社の口座には入金されていないので、「会社が発起人に預けている」という意味の仕訳を行います。

※別段預金を使った場合は、「預け金」を「別段預金」に読み替えてください。以下の記述についても同じです。

法人口座へ資本金を移した日の仕訳

前提…発起人個人名義の口座から100万円を会社の口座に移動した

借方勘定科目金額貸方勘定科目金額
普通預金1,000,000預け金1,000,000

「発起人に預けていた100万円が会社にかえってきた」という意味の仕訳を行います。
現金でおろしてから入金しても、口座から直接振込してもかまいません。

振込手数料が引かれた場合は、次のようになります。

借方勘定科目金額貸方勘定科目金額
普通預金999,568預け金1,000,000
支払手数料432

これは振込手数料を振込相手負担(会社負担)とした場合です。

相手負担ではなく、振込人(出資者個人)が立て替えた場合には、次のようになります。


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借方勘定科目金額貸方勘定科目金額
普通預金1,000,000預け金1,000,000
支払手数料432短期借入金432

預け金1,000,000円が0になるのは共通しています。
後者の場合、振込料432円は会社が負担すべき経費を個人が立て替えたわけですから、会社は出資者に対して432円の借金を負うことになります。
その借金が、「短期借入金」という勘定科目です。

わかりやすくするため、会社負担として振込手数料を相殺した金額を入金することをオススメします。

法人口座に移す前に資本金から経費を払っていた場合の仕訳

法人口座に移動する前に、すでに経費として資本金を使っていた場合は、次のように仕訳します。

前提…まだ発起人口座にある資本金100万円で、会社設立費用(実印、登録免許税、司法書士報酬)20万円を払った

借方勘定科目金額貸方勘定科目金額
創立費200,000預け金200,000

前提…まだ発起人口座にある資本金100万円で、営業開始準備費用(名刺・チラシ作成、出資者との打ち合わせ代など)5万円を払った

借方勘定科目金額貸方勘定科目金額
開業費50,000預け金50,000

前提…まだ発起人口座にある資本金100万円で、10万円の消耗品を購入した

借方勘定科目金額貸方勘定科目金額
消耗品100,000預け金100,000

「発起人に預けているお金から会社の経費を払った」わけですから、預けている=返してもらうお金は減っています。
今回挙げた3例で、合計35万円使っていますから、返してもらうべきお金は100-35=65万円です。

前提…残りの65万円を会社の口座に預け入れた

借方勘定科目金額貸方勘定科目金額
普通預金650,000預け金650,000

預け金が0になり、これで会社は預けていたお金を全額返してもらったことになります。

資本金は会社のお金ですから、会社のことに使うのであれば何の問題もありません。

資本金を法人口座に移す前に使いこんでしまった場合(見せ金や個人的支出のケース)

資本金を法人口座に移す前に使っていても、上記は「会社の経費」となるものなので、問題ありませんでした。

ただ、経費ではなく、

  • 個人的な支出をしてしまった
  • 会社設立のために一時的に資本金を用意しただけだから、会社には移せない(いわゆる見せ金)

といったケースは、問題があります。
資本金はあくまで会社のお金ですから、社長が個人的に使ったり、会社に入金しないというわけにはいかないのです。

その使いこんでしまった金額や、会社に移せない金額は、「預け金」とか「短期貸付金」として会社のB/Sに残り続けます。
預け金は会社にとっては債権だから回収する必要があり、社長にとっては債務ですから返済する必要があります。
自分の会社なのに?と思うかもしれませんが、社長という個人と、法人は完全に別人として考えなければいけません。

会社側からすれば、社長にお金を貸していることになります。お金を貸していれば、利息が付き、だんだん金額が膨らんでいきます。
そして、こうした役員に対する貸付金というのは、金融機関からの印象がとても悪いものです。
銀行側からすれば、「ウチから借りなくても、そのお金返してもらえばいいでしょ」となってしまいます。

会社のお金と個人のお金は別、という意識を持っておきましょう。


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社長個人と会社のお金が分かれていないケースの処理方法と仕訳

会社設立当初は、会社と個人のお金がしっかりと分かれていなかったり、個人の口座やクレジットカードを使って取引を行ったりするものです。

よくあるケースの処理をまとめてみました。

個人の現金を使って経費を立て替えた場合

設立当初は、社長個人のお財布から経費を払うことが多いものです。

本来であれば、

  1. 資本金を会社の口座に移す
  2. 会社の口座から現金を引き出す
  3. その現金で経費を払う

という手順になるのでしょうが、口座開設には時間がかかりますし、現実的ではありません。
社長が立て替えたときは、以下のような仕訳を切っておきましょう。

前提…電車代5,000円を社長が立て替えた

借方勘定科目金額貸方勘定科目金額
旅費交通費5,000短期借入金5,000

社長が立て替え払いをした場合は、「会社が一時的に社長に借りている」という意味で、短期借入金という勘定科目を使います。
しっかり個人と会社の現金の区別がつくようになった段階で、精算すればいいでしょう。

前提…立て替えてもらった5,000円を社長に返した(振り込んだ)

借方勘定科目金額貸方勘定科目金額
短期借入金5,000普通預金5,000

社長個人の現金、と書きましたが、社長個人の預金口座から経費を払った場合も同じです。

実は、この経費の立て替え・精算という処理は、設立当初だけでなく、ずっと使える方法です。
会社の現金管理を完璧にしようとすると、

  • 個人のサイフ、会社のサイフを2つ管理する必要がある
  • 帳簿の残高と実際の残高の照合が合わない
  • 店舗や人数が増えると、とてつもなく時間がかかる

といったことから、とても面倒くさいのです。
ですから、経費精算に関しては、立て替える→精算する、という処理をオススメしています。

その件に関しては以前に記事にしています。

関連記事:経理は出来るだけ楽に。現金出納帳を使わない簡単現金管理

個人のクレジットカードを使った場合

個人のクレジットカードを使って経費を立て替えた場合も、上の個人の現金で立て替えた場合と同じで、

 

  • 払った時→経費 / 短期借入金
  • 精算した時→短期借入金 / 普通預金(現金)

という処理でOKです。

個人の口座に売上が入金された場合

法人の口座開設がされるまでの間、個人の口座に売上が入金される場合も多いものです。

その場合、売上→個人口座に入金→法人口座に移す、という流れになります。

前提…4/30に100万円を掛で売り上げた

借方勘定科目金額貸方勘定科目金額
売掛金1,000,000売上1,000,000

前提…5/31に100万円が個人の口座に入金された

借方勘定科目金額貸方勘定科目金額
預け金1,000,000売掛金1,000,000

前提…6/15に法人口座開設ができたので、個人の口座から法人の口座に売上代金を移動した

借方勘定科目金額貸方勘定科目金額
普通預金1,000,000預け金1,000,000

会社の売上→代金を回収したけど個人に預けている状態→会社に返す、という流れなので、考え方は資本金の場合と同じです。

売上代金のうちから経費を払った場合も、資本金の時と同じです。

前提…売上代金のうちから5万円で消耗品を購入した。口座開設後、残りの代金を法人口座に移動した

借方勘定科目金額貸方勘定科目金額
消耗品費50,000預け金50,000

 

借方勘定科目金額貸方勘定科目金額
普通預金950,000預け金950,000
  • 売上は本来計上すべき日に計上する
  • 預け金・売掛金が0になっているか確認する

この2点がポイントになります。

会社設立前後の費用を個人が立て替えた場合の処理方法と仕訳

会社を設立した時にかかった費用や、設立してから営業を開始するまでにかかった費用も、会社の経費にすることができます。
「創立費」「開業費」と呼ばれるものです。

以前に記事にしています。

関連記事:独立開業前・法人設立前に支払った費用は経費になる?

資本金から払った場合の処理方法は上述した通りです。
ここでは、社長個人が創立費や開業費を立て替えた場合の仕訳について書いていきます。

創立費について

創立費とは、

  • 登録免許税
  • 定款などの作成費用
  • 会社設立のための司法書士への報酬
  • 会社の実印

など、会社を作るのにかかった費用です。

前提:会社設立費用20万円を社長個人のお金で支払った

借方勘定科目金額貸方勘定科目金額
創立費200,000短期借入金200,000

会社の経費を社長に立て替えてもらったため、会社は社長にお金を借りていることになります。
短期借入金の残高をチェックし、タイミングを見て経費精算するようにしましょう。

開業費について

開業費とは、

  • チラシ代などの広告費
  • 印鑑代
  • 名刺代

など、設立してから営業を始めるまでにかかった初期費用です。

前提:設立してから営業を行うまでの準備費用20万円(広告代・名刺代など)を社長個人のお金で支払った

借方勘定科目金額貸方勘定科目金額
開業費200,000短期借入金200,000

 


[編集後記]

昨日は、ブログ執筆とメールコンサルティング(単発相談)を中心に。
不安を解消することができたようで、良かったです。

焼うどんの味付けは、バター醤油がベストだという結論に達しました(義理姉レシピ)。

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この記事を書いた人 入野 拓実
独立4年目の31歳。自称「とっつきやすい系税理士」
中小企業やフリーランスの税務顧問、相続税申告のほかに、
自力申告・独立支援・法人化などのコンサルティング業務を行っています。
各種セミナー、執筆実績多数。
1989.3.6生まれ。妻・娘と3人暮らし。
スーツよりセットアップ派。
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※当ブログの記事は、投稿日現在の法律に基づいて書いております。 改正や個別的なケースには対応していない場合もありますので、ご注意ください。



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