一人会社は黒字で税金を払うべきか、赤字で節税するべきか|均等割しか払いたくない問題




一人会社、家族会社の場合、黒字にして税金を払うことにメリットはあるのでしょうか。

黒字だと税金が増える、赤字だと均等割だけで済む

税金の基本的な考え方として、「儲け(利益・所得)に対して税金を課す」というものがあります。

法人が払う法人税についてもこの考え方が採用されていて、

  • 利益(所得)が多いほど税金は高くなる
  • 利益(所得)が少なければ税金は安くなる

という仕組みになっています。

利益の全額が会社に残るわけではなく、
利益のうちから20~30%ほどは納税し、納税した後のお金が会社に残るわけです。

 

赤字でも払わなければいけない税金として、「住民税の均等割」というものもあります。

資本金の金額などによって均等割の金額も変わりますが、一人会社の多くは7万円です。

 

赤字であれば、法人税は7万円だけで済みますが、
利益が出ていると、7万円+利益の20-30%の税金がかかってきます。

人間、税金を払うのは嫌なものです。

「意図的に赤字にして、均等割しか払ったことがない」という方も多いのではないでしょうか。

「赤字にして均等割しか払わない」ことのデメリット

赤字にすれば均等割7万円だけ払えば済みますが、次のようなデメリットがあることも理解しておきましょう。

会社にお金が貯まらない

赤字では会社にお金は貯まりません。

黒字の場合、かつ、税金を払った後の手残りが会社に貯まっていくわけです。

「税金を払いたくない」といって無駄遣いをしていては、お金は減る一方です。

お金を増やしていくのであれば、税金は避けて通れませんので、まずはこの仕組みを受け入れる必要があります。


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金融機関からの評価が低くなる

通常、銀行は、赤字の会社にはお金を貸しにくいものです。

赤字=返済能力がない、ということであり、返済能力のない会社にお金を貸すのはリスクだからです。

 

「一人会社だし、お金を借りる必要はない」と思われるかもしれませんが、
長く事業を続けていれば、

  • 新規部門にチャレンジしたい
  • 方向転換したい
  • 一度立ち止まって考えたい

といったタイミングは必ずやってくるのではないでしょうか。
世の中は変わっていくものですので、対応しなければなりませんし。

 

こういったタイミングで「もう少しお金と時間に余裕があればな…」という話を数え切れないほど聞いてきました。

そんな時にお金を借りられれば、チャレンジや時間稼ぎができるものです。

逆にお金を借りられないと、チャレンジもできず、目の前の食べていくための仕事だけでいっぱいいっぱいになってしまいます。

 

「一人会社だからお金を借りずにやっていきたい・借りる必要はない」という考え方もありますが、

「資本力のない一人会社だからこそ、いつでもお金を借りられる態勢を整えておく必要がある」と僕は考えています。

 

「じゃあ、借りたくなったら黒字にするよ」とも思われるかもしれませんが、
決算書(貸借対照表の純資産の部)には、過去の業績も蓄積されますし、
金融機関はその年の決算書だけで業績を判断するわけではありません。

付け焼刃の黒字では、評価の高い決算書にはならないのです。


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コツコツと黒字を蓄積していく必要があります。

取引先からの評価が低くなる

現在は一人会社でも拡大志向の場合、
将来的には取引先に決算書を提出する機会も増えていきます。

そういった時のためにも、決算書の数字を蓄積しておく必要はあるのではないでしょうか。

(蓄積については、金融機関の項目と同じ考え方です)

個人・法人トータルでの税金は高くなっているかもしれない

「法人税で取られるのは嫌だから、利益が出ないように役員報酬で全額個人に移す」

よく見られる手法です。

  • 法人税を払わなくて済む(均等割7万だけで済む)
  • 貰える給料が増える

といったことから、とても得しているような気がします。

ただ、本当に得をしているかどうかは、なんともいえないところです。

 

利益を法人に残したままだと、法人税が増え、
役員報酬として個人に移すと、所得税・住民税・社会保険料(健康保険&厚生年金)が増えます。

世の中上手くできていて、どちらかを節税すればどちらかで払わざるを得ません。

 

ですがその中でも、

  • 法人税:年に1回まとめて払うため負担を感じやすい
  • 所得税・住民税・社会保険料:毎月払う(給料から天引き)のため、負担を感じにくい

といった傾向があり、
「給料=自由に使えるお金が増える」という嬉しさもありますから、さらに負担を感じにくくなります。

 

「負担を感じるか感じないか」と「負担が大きいか小さいか」というのは別問題です。

気持ちとは切り離して、「実際の負担金額はいくらか」をシミュレーションをした上で役員報酬を決めるべきではないでしょうか。

(実際の役員報酬の設定は負担金額だけで決めるものではありませんが。モチベーションや生活費などの問題もあるので)

一人会社こそ黒字を出す習慣作りをオススメしたい

規模(従業員や取引先)の多い会社、株主が多い会社と違い、
一人会社だと、赤字にするも黒字にするも自由ですし、自分のさじ加減一つです。

役員報酬の金額をいくらにするか、備品・消耗品の購入、といったことだけで利益をコントロールできてしまいますし、
赤字だからと言って株主に文句を言われることもありません。

良くも悪くも、です。

 

少額の赤字(例えば5万円とか)の決算書を見るたびに、
「何とかならなかったのかな…」と感じます。

当然、粉飾を推奨しているわけではありません。

少額の赤字であれば、役員報酬の設定、決算予測を見積もって経費の削減、
などのまっとうな手段でいくらでもやりようはあるはずです。

 

コントロールしやすく、誰からも文句を言われないからこそ、
戦略的に考えていく必要があるのではないでしょうか。

税負担を考えていくことはもちろん、

  • 将来の備え
  • お金を増やす
  • 対外的な信用

という観点から、黒字を積み重ねていくのも一つの手です。

一人会社のうちにクセ付けたノウハウは、拡大した時にも役に立つはずです。

もちろん、戦略的に赤字にして均等割だけを払っているのであれば、それはそれで問題ありません。


[編集後記]

昨日は、法人クライアントに決算報告、個人クライアントと月次打ち合わせ。

今日は妻の誕生日なので、ケーキ買って早めに帰ろうかなと。集中して頑張ります。
(ブログ投稿は妻のチェックを受けた後になるため遅くなりがちですが)

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この記事を書いた人 入野 拓実
独立4年目の31歳。自称「とっつきやすい系税理士」
中小企業やフリーランスの税務顧問、相続税申告のほかに、
自力申告・独立支援・法人化などのコンサルティング業務を行っています。
各種セミナー、執筆実績多数。
1989.3.6生まれ。妻・娘と3人暮らし。
スーツよりセットアップ派。
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