個人事業主の方の確定申告では、様々な準備が必要ですし、たくさんの書類を集めなければなりません。
具体的には、
- 事前に届け出ておくべきもの
- 日々の経理、帳簿の入力に必要になるもの
- 実際に確定申告をするときに必要になるもの
の3つのフェーズに分けることができます。
1つずつ具体的に解説していきます。
事前に届け出ておくべきもの
事前に提出しておくべき書類は、以下のようなものです。
開業届、青色申告承認申請書
個人事業主が開業する際には、様々な書類を税務署に提出します。一般的な個人事業主であれば、
- 開業届
- 青色申告承認申請書
の2つを最低限提出しておけば問題ないケースがほとんどです。
提出方法には、「郵送」「税務署の窓口で提出」といった方法がありますが、いずれにせよ「控を受け取ること」を忘れないようにしましょう。提出用と控え用の2部用意(提出用をコピーでOK)し、控えにも受付印を押してもらうのです。
郵送の場合には、切手を貼った返信用封筒を同封すれば、受付印が押された控えが返送されてきます。
開業届は各種手続きに必要になることも考えられますので、忘れずに控えを持っておきましょう。
e-taxの届け出
確定申告書の提出方法には、「e-tax(電子申告・ネット提出)」と、「紙で提出」の2つの方法があります。
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2020年分(令和2年分)の確定申告から、e-taxか、紙で提出かによって、「青色申告特別控除」の金額が変わります。e-taxであれば青色申告特別控除の金額は「65万円」ですが、紙で提出する場合には「55万円」になってしまうのです。
個人事業主の方は、e-taxで確定申告ができるようにしておくべきです。
e-taxには、マイナンバーカードが必要になります。
「通知カード」ではなく「マイナンバーカード」です。マイナンバーカードにはICチップが入っており、それをICカードリーダーライターで読み取ることでe-taxが可能になります。
マイナンバーカードが不要な「IDパスワード方式」という方法もありますが、IDとパスワードを取得するために税務署に行く必要があったり、メッセージボックス(申告のお知らせ、申告結果の報告が届くメールボックス)の利用に制限があるので、オススメしません。
IDパスワード方式は、マイナンバーカードが普及するまでの暫定的な処置でいずれ廃止されるようですから、今のうちにマイナンバーカードを取得しておきましょう、
早めにマイナンバーカードを取得しておくことをオススメします。
振替納税の手続き
税金の払い方には様々な方法がありますが、個人事業主の方であれば「振替納税」がオススメです。
申告した所得税と消費税については、期日に指定した口座から自動的に口座引き落としされます。紙の納付書やダイレクト納付での支払いよりもラクです。
日々の経理、帳簿の入力で必要になる書類
確定申告は、その年の所得(事業の利益)を申告するものです。所得は「売上から経費を差し引いて計算」します。
売上・経費に関する書類を集め、それを会計ソフトに入力していくことで、自動的に集計→所得が計算されます。
自分で入力するにせよ、税理士さんに丸投げするにせよ、売上や経費の証拠、入金や出金の証拠となる書類を集めることが大切です。
具体的には、以下のような書類を集めていきます。
売上の証拠になる書類
売上の証拠となるものは、次のようなものです。
請求書
売上の証拠として一番わかりやすいのは、クライアントさんに提出している請求書です。
締め日に請求書を発行→預金口座に入金、という流れが多いはずです。その場合、請求書を漏れなく保管しておけば、売上の証拠は全て集まることになります。
発注書・注文請書
業務委託契約などの場合、発注書・注文請書で済ませている場合も多いでしょう。
発注書や注文請書も売上の証拠になるものです。
領収書
売上代金を現金で受け取った場合には、先方に領収書を渡し、控を保管しておきましょう。
(預金振込みやクレジットカードではなく、現金手渡しという意味です)
もちろん、レジペーパーでも構いません。
経費の証拠になる書類
経費の証拠となるものは、次のようなものです。
レシート・領収書
現金払い、クレジットカード払いの経費は、レシートが証拠になります。レシートをすべて集め、なくさずに保管することが一番大切です。
領収書ではなくレシートで構いません。クレジットカードや電子マネーで払った場合にもレシートを保管する必要があるので注意してください。
スクラップブックに貼ったり、月別に分けて封筒に入れておけば構いません。
レシート・領収書の楽な整理・貼り方・保管方法(中小企業・個人事業主向け)
レシートが出ない場合
香典、お祝い金など、レシートが出ない場合もあるでしょう。
その場合には、伝票やExcelに記録しておけば大丈夫です。
領収書(レシート)がない場合の経費は、Excelか伝票に記録しておく
請求書
取引先から送られてくる請求書も大切な証拠です。
請求書用のファイルを作り、まとめて保管しておくことをオススメします。
契約書
例えば家賃など、契約書だけ交わして、毎回請求書や領収書が出ないケースもあるでしょう。
そういった場合は契約書が証拠になります。
預金通帳
他には、預金通帳も必要です。通帳を記帳する必要がありますが、ネットバンクであればネットからデータでみられてラクなのでオススメです。
売上が入金されている口座、経費の支払いがある口座については、帳簿に記録していく必要があります。
できれば事業専用の口座をひとつ作り、売上の入金や経費の支払いをその口座にまとめてしまうといいでしょう。
入力する会計ソフト
上述したような書類を集めたら、それを見ながら会計ソフトに入力していきます。
使用する会計ソフトは、一般的なフリーランスであれば「クラウド会計ソフト」と呼ばれるものがオススメです。「freee」や「マネーフォワードクラウド」が代表的なものです(現状他のソフトはイケてないので、オススメしません)。
クラウド会計ソフトであれば、ネット環境さえあればどこでも使えますし、ネットバンクやクレジットカードと同期→データを取り込むことで、入力作業をある程度自動化することができます。
「freee」と「マネーフォワードクラウド」どちらにするかは、体験版を使ってみて、料金との兼ね合いなどで決めていただければと思います。
僕個人的には、「どっちでもいい」という方には、freeeをオススメしています。
特徴は以下の通りです。
freee | マネーフォワードクラウド | |
特徴 | 操作性がよく、知識がない人にもわかりやすい 良くも悪くも会計ソフトらしくない 癖があるので簿記の知識があるとかえって使いにくい | 従来の会計ソフトを踏襲しつつ、クラウド会計ソフトのいい部分が備わっている |
e-tax(ネットでの申告書提出) | freee内で完結 | 他ソフトにエクスポートすることで可能 |
オススメしたい人 | イマドキのソフトに抵抗がない人 | 簿記の勉強をしたことがある人 |
どちらもできることはほとんど変わりませんので、操作性や直感的にわかりやすいかどうかで決めるといいでしょう。
実際に確定申告をする時に必要になるもの
実際の確定申告で必要になる書類は、以下の通りです。
確定申告書
確定申告書には、「確定申告書A」と「確定申告書B」の2つがあります。
「確定申告書A」は、申告できる所得の種類が限られています。個人事業主の方が使うのは、「確定申告書B」です。
※左がA、右がB
また、青色申告決算書(一般用)という書類も必要になります。
これらの書類は税務署に取りに行くか、国税庁HPからダウンロードすることができます。
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ただし、上述した会計ソフトを使っている場合には、これらの書類を画面上で操作して書類を作成→提出することができますので、税務署に取りに行く必要はありません。
マイナンバーカードと身元確認書類
確定申告書には「マイナンバーを記載」し、さらに本人確認のために「マイナンバーカードを申告書提出の際に提示 or 確定申告書にコピーを添付」する必要があります。
マイナンバーカードを持っていない場合の本人確認は、「通知カードなど、マイナンバーが確認できる書類」と「身元を確認できる書類」の2種類を提示 or コピーを添付する必要があります。
表にまとめてみました。
番号確認 | 身元確認 | |
マイナンバーカードを持っている | マイナンバーカード | マイナンバーカード |
マイナンバーカードを持っていない | 通知カード or マイナンバーの記載がある住民票の写し | 運転免許証、パスポート、在留カード、保険証、身体障碍者手帳 |
※e-taxであれば、身元確認書類の提示or添付は不要です。個人事業主の方は、マイナンバーカードを取得+e-taxで申告することをオススメします。
控除を受けるために必要な書類
社会保険料や寄附金などを支払った場合には、所得から「控除」を受けることができます。
主な控除と、控除を受けるために必要な書類をまとめてみました。
控除の種類 | 内容 |
社会保険料控除 | 国民年金、国民健康保険の支払額を控除できる |
小規模企業共済等掛金控除 | 小規模企業共済、iDeCoなどの掛金の支払額を控除できる |
生命保険料控除 | 生命保険料を支払った時に控除を受けられる |
地震保険料控除 | 地震保険料を支払った時に控除を受けられる |
医療費控除 | 支払った医療費が一定額を超える場合に控除を受けられる |
寄附金控除 | ふるさと納税など、寄付をした場合に控除を受けられる |
控除を受けられる金額は、それぞれ「いくら支払ったか」によります。なので、1年間の支払額を証明するためにも、以下の書類を集める必要があります。
紛失しないようにすべきですが、もし紛失した場合には問い合わせれば再発行することもできます。
社会保険料控除
個人事業主の方は、社会保険について原則として「国民年金」と「国民健康保険」に加入しているはずですので、それらの1年間の支払額を調べる必要があります。
国民年金は、「国民年金保険料控除証明書」という書類が11月頃に郵送されてきます。
国民健康保険は、基本的に控除証明書が送られてきません。領収書や「お支払い済額のお知らせ」といった書類から支払金額を計算しましょう。
小規模企業共済掛金控除
小規模企業共済、iDeCoについても、「控除証明書」が11月ごろに郵送されてきます。このようなハガキです。
生命保険料控除・地震保険料控除
各保険会社から、「控除証明書」が11月頃に郵送されてきます。このようなハガキです。
医療費控除
医療費控除は、原則として自分(家族含め)が1年間に支払った医療費の合計が「10万円を超えた場合」に受けることができます。
「医療費の明細書」という書類を提出する必要があります。
「医療費の明細書」を書くためには、健康保険組合などから送られてくる「医療費通知」や、「領収書」が必要になります。
※医療費控除に替えて、ドラッグストアなどで購入した医薬品が1万2千円以上であれば「セルフメディケーション税制」の適用を受けることもできます。
寄附金控除
「寄附金受領証明書」という書類が、ふるさと納税をした自治体から送られてきます。
また、日本赤十字社や認定NPO法人などに寄附した場合にも、それぞれの団体から受領証が送られてきます。
株の取引
特定口座で株の取引きをしている場合、「年間取引報告書」が年明け後の1月に証券会社から発行されます。
ネット証券を利用している場合、ネット上から確認可能です。
支払調書
原稿料、デザイン料など、一定の報酬を受け取っている方は「支払調書」という書類がクライアントから送られてくることがあります。
(税理士報酬もそうです)
この支払調書、年間の「支払金額」と「源泉徴収税額」が明記されていますので、確定申告によく利用されています。
ですが支払調書は、実は「クライアントが税務署に提出するもの」にすぎず、私たちに発行してくれるのはクライアントの厚意にすぎません。
最近では交付しない会社も増えてきている印象です。
支払金額についても、必ずしも確定申告で計上すべき売上金額と一致しているとは限りません。確定申告で計上するのは発生ベースでの売上ですが、支払調書では現金支払いベースでの支払金額が記載されている場合があるのです。
あくまでも支払調書は、チェック程度に使うことをオススメします。
確定申告に支払調書は必要ない。添付提出しない・送られてこない・アテにしない・いらない。
支払調書と帳簿(決算書・申告書)の売上・源泉の金額が合わない!どうする?
e-tax(ネット提出・電子申告)
e-taxに必要なものは、以下の2つです。
- マイナンバーカード
- ICカードリーダーライター
「通知カード」ではなく「マイナンバーカード」です。マイナンバーカードにはICチップが入っており、それをICカードリーダーライターで読み取ることでe-taxが可能になります。
ICカードリーダーライターは、私はこれを使っています。
給与収入もある方:源泉徴収票
給与収入もある方は、勤務先からもらった源泉徴収票を用意しましょう。
たとえば、「会社員だったけど、年の途中で独立して個人事業主になった」「個人事業主として活動しているけど、ちょっとだけバイトもしている」といった場合には、給与所得についても申告する必要があるためです。
まとめ
個人事業主の確定申告に必要な準備、必要な書類をまとめてみました。
自分に必要な書類をピックアップし、紛失せずに、確実に集めて保管するようにしましょう。
「思ったように利益が出ない」「手元にお金が残らない」「税金が高すぎる」
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